2012年08月30日

割り箸とMY箸

パソコンのファイルを整理していたら、平成20年に大阪木材青年経営者協議会(通称:大青協)で、「箸から考える環境問題」と題した討論会に関するファイルがでてきました。
この討論会は私がナビゲーターをした関係上、討論会の結論をまとめており、そのファイルが出てきたのです。

4年少し前のものですが、さまざまな角度からの意見が凝縮されているので、改めてここにアップしておきたいと思います。


割り箸とMY箸 ~箸から考える環境問題~
材木屋の主張 そして行動とは?
H20.07.22 大阪木材会館
ナビゲーター 奥 重貴
【討論会の結論】

 割り箸とMy箸について参加者からそれぞれ意見を出して貰いまとめた結果、総括としては割り箸、My箸共に長所・短所があるので一方的にどちらが良い・悪いという結論を導くべきではなく、ケース・バイ・ケースで使い分けるのが良いであろうという結論になった。また、単純に割り箸・My箸についてだけではなく、箸文化についての言及やこんな割り箸があったらよいのではないかといった未来志向の意見も出された。まず、割り箸についてだされた意見をまとめてゆきたい。

 そもそも割り箸は使い捨てなので資源を無駄に使っているという一般論に対して、逆に使い捨てであることから非常に衛生的だという反論が出された。また割り箸がテイクアウトの食品などに無料でつけられていることから、出先の食事でも困らずに飲食ができるというメリットが提示された。

 実際に割り箸を使用することを考えた場合、原材料となる樹木の伐採方法や、衛生管理に疑問の残る中国製輸入箸の利用は極力やめるべきだという意見が多数を占めた。皆伐方式で製造される中国産割り箸はその後の植樹作業も不十分で、森林伐採を推し進める結果を導き出している。また、箸を白く見せるために漂白剤に使用や、製品となった割り箸にカビが生えないように防腐剤や防カビ剤が使用されていることが、口に入れる箸の安全面について大きな疑問となっている指摘がされた。一方で、間伐材などを活用した国産割り箸の使用については概ね全員が積極的利用をすべきという意見だった。

 My箸の利用については、エコロジーであるという一般論のほかに、使い捨てでないということ以上に自分の食器であるという意識があり大切にするというが出された。その一方でマイ箸を洗剤を使って洗浄することは水環境の汚染を広めることに繋がるので良くないといった指摘がされた。また化石燃料を用いて製造されたマイ箸の存在についてはそもそもマイ箸の意義を理解していないといった意見も提示された。また、My箸運動を推進している人は流行りものに敏感で弱いといった(若干偏見を交えた)意見も出され、My端運動は一過性のブームで終わる可能性が示唆された。

 割り箸とMy箸についての様々な意見が出される中、そもそも箸を上手に使える若者が減っているといった箸文化そのものに対する危惧も提示された。また、割り箸は一体どれくらいの量が年間使用されているのか調査する必要があるといった意見も出され、今後更に調査する必要があることも示唆された。

 またこれらのほかに、割り箸の利用推進のためのアイディアがいくつか提案されたのが非常に興味深かった。具体的には

  • 割り箸にも産地や樹種を明記する
  • 割り箸を有料化(または課税)して植林の費用に充てる
  • 輸入割り箸に高額の関税を掛けて、国産割り箸に競争力を持たせる
  • 杉の圧縮材を用いた割り箸なら強度も十分
  • 割り箸の利用もエコロジーであることをもっとアピールするべき
  • 割り箸そのもののリサイクルを考える必要がある
などが提示された。


【討論会を終えて】

 割り箸とMy箸というテーマでブログに記事を掲載した都合上、今回の討論会でナビゲーターを務めることになった訳だが、自身の意見を表に出さず皆から意見を集めて集約してゆく作業というのはこれまでに行ったことがなく、良い勉強となった。

 割り箸論争については端的に「割り箸は良くない」「My箸はエコロジーだ」といった意見がよく聞こえてくるが、今回の討論で出された意見のように一概に一方が良く他方が良くないと結論付けることはできないと皆が認識していることがわかった。

 割り箸の製造についてもいろいろと意見が出されたが、念のため割り箸製造の現状を簡単に記しておきたい。今日本で使用されている割り箸は年間250億膳といわれている。これは概ね日本人1人が5食に1食は割り箸で食事をしている計算になる。使用されている木材を立木で換算すると250万本に相当するらしい。しかし、これら割り箸の実に9割超が輸入に頼っているのが実情。そして輸入先はほとんどが中国。問題となっているのはこの中国での割り箸製造工程で、山に生えている木を全て切り払い(皆伐)、伐採した木を丸々割り箸の材料に用い(割り箸製造のための樹木伐採)、出来上がった割り箸を漂白したり防カビ剤の塗布を行っているという。そのためエコロジー以外の観点からも輸入割り箸の使用については疑問が提示されたのだと思われる。

 国産割り箸については、もともとは端材の有効活用として考え出された産物であるので、今日もそれに則った部分があると思われるが、近年では間伐材を活用した割り箸も登場しているという。「樹恩割り箸」がそれである。(http://juon.univcoop.or.jp/index.html)但し、コスト的な面などからまだまだ輸入割り箸のシェアを奪還できる状況には程遠いようだ。

 My箸については、箸洗浄の際の水質汚染やMy箸素材が化石燃料を使用していることがある点、またMy箸本来の目的を忘れてしまい趣味的に集める行為などの問題点が挙げられた。一方で自分自身の箸という意識はものを大切にする気持ちに繋がるので良いといった積極的意見も聞かれた。木材需要の促進という観点だけで考えるのであれば、使い捨ての割り箸を国産間伐材を用いて貰うことが非常に良いのだが、総体的に考えたときにやはりこの「ものを大切にする心」は非常に大切なことであり、また山を守ってゆく精神にも繋がるので大きく評価したいと思う。

 今回の討論会で非常に興味深く感じたのは、割り箸を環境に配慮した上で利用促進させるアイディアが提示されたこと。「割り箸に樹種や産地の表示」というのは木に親しんで貰うには良い提案だし、「割り箸そのものに森林保護のための費用を上乗せ」というのは価格の点で折り合えれば非常に良いことと思われる。輸入割り箸に関税を掛けてこれに適用するというのもひとつの方法であろう。また「割り箸そのもののリサイクル」については既に取り組んでいるところがあり、前向きな結果を期待したいところである。「杉の圧縮材を使用する」という観点は、箸作りに向かないやわらかい樹種を有効活用する方法としてよい案と思う。あとは費用との兼ね合いではないだろうか。

 また箸文化そのものに対する警鐘として「箸を上手に使える若者が減っている」といった指摘もあったが、材木業界として割り箸促進や木のMy箸促進を行うのであれば、正しい箸の使い方講座のようなものを企画してゆくのも楽しいかもしれない。若者の間では和風がひとつブームになってきており、夏場は浴衣がけを以前より見かけるようになったが、やはり着付けがおかしかったり、立ち居振る舞いが着物に似合わないことも多々見られる。彼らの間では「正しい和」に関する興味はあるようだが、昔ならあたり前のように周りから教えて貰えた環境が核家族化や都市部集中の生活体系のためになくなってしまい、機会に恵まれないのが実情の様である。

 木の家が見直されているように、箸文化に対する若者の興味は潜在的にあるかも知れない。そいういった部分を刺激しながら割り箸・My箸・木の箸について考えされる機会を材木屋が提唱してゆくのも悪くはないのでなかろうか。




人気ブログランキングへ
和歌山ブログランキング

↓↓↓↓↓ こちらをぽちっとしていただけると多くの方に読んでもらえます ↓↓↓↓↓
人気ブログランキングへ
和歌山ブログランキング
同じカテゴリー(大きなつぶやき・・・)の記事画像
「旧宮家復帰」聴取
新型コロナウィルスの蔓延と神社の祭礼
RADWIMPS と ゆず
選挙
捏造社会・・・
一日も早い帰国を!
同じカテゴリー(大きなつぶやき・・・)の記事
 「旧宮家復帰」聴取 (2020-04-17 14:22)
 新型コロナウィルスの蔓延と神社の祭礼 (2020-03-03 11:00)
 新帝の大嘗祭 (2018-11-23 17:44)
 ブラック・フライデーではなくて新嘗祭です! (2018-11-23 15:46)
 GHQと天皇の退位 (2018-11-23 15:21)
 RADWIMPS と ゆず (2018-06-14 18:50)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。