2013年10月08日

横浜線の踏切事故

先日、踏切内で倒れていた方を救おうと踏切内に飛び込んだ女性が轢死した事故がありました。
自らの命を犠牲にして人助けをしたこの女性に政府は紅綬褒章を贈ることを決定したそうです。

この事故に対してはいろいろと意見が分かれています。

JR横浜線踏切事故:学ぶべきものは/神奈川

カナロコ by 神奈川新聞 10月5日(土)11時45分配信
JR横浜線踏切事故:学ぶべきものは/神奈川

 横浜市緑区の踏切で、倒れていた男性(74)を助けようとした会社員村田奈津恵さん(40)=同区台村町=が電車にひかれて亡くなった事故で、安倍晋三首相は「勇気をたたえる」として書状を贈ることを決めた。県と横浜市も知事と市長の名で「感謝状」を贈るという。弔意を示すことはあり得るだろう。しかし、命が失われた事故を美談にすることで、大切なものが見落とされるのではないか-。そう感じている人もいる。

 書状を贈る理由について、菅義偉官房長官は語った。「勇気ある行動をたたえる」「他人にあまり関心を払わない風潮の中で、自らの生命の危険を顧みずに救出に当たった行為を国民とともに胸に刻みたい」。そして、「総理もぜひたたえたいという話をされていた」。

 ■言葉見当たらず
 2005年に母親を踏切事故で亡くした加山圭子さん(58)=同市神奈川区=はしかし、同じ言葉を口にすることはできない。
 事故翌日の2日、事故現場の踏切に献花に訪れた。「『お悔やみ申し上げます』とか『ご冥福をお祈りします』とか、簡単には言えなかった。やり切れない気持ちでいっぱい」
 母は、保安係が誤って手動式の遮断機を上げたため、踏切内に入ったところを電車にはねられた。全国の踏切事故の遺族でつくる「紡ぎの会」代表を務め、事故のたびに花を手向けてきた。公共の場であり、安全であるべき踏切で悲劇が繰り返されないことを願ってきた。
 事故の形態はさまざまだが、大切な人を失った悲しみに違いはない。自身の過去と重なるだけに、なおさら言葉は見当たらない。「今はまだ、現実を受け止められないかもしれないし」
 強調したいのは、警報器や遮断機があっても踏切の中に簡単に入れてしまうという、そもそもの問題だ。「小さい子どもや認知症の高齢者が迷い込む危険性もある。高架にするなど踏切自体をなくせないものか」。弱者が被害に遭うという今の社会を象徴する問題であるとも感じている。
 国土交通省によると、2012年度に発生した踏切事故は295件。121人が死亡し、99人が負傷している。

 ■まず非常ボタン
 ある鉄道会社の男性社員は危惧を抱く。「今回の行動が正義なのだということになれば、同じような事故が起こる可能性もあるのでは」
 鉄道各社は「人の立ち入りを見つけたら、非常ボタンを押してほしい」と口をそろえる。「社員であってもまずは電車を止めるための行動を取る。『どうして助けないんだ』と思うかもしれないが」。電車を止め、あるいは少しでも速度を落とすことで衝突によるダメージを減らすことができるからだ。
 線路内にいる人を助けようとするより、非常ボタンを押す方が早くできる。だが、男性は「今はそういうことを口にすれば、ひどい人と言われそうなタイミング。美談としてエスカレートしていくのが怖い」とも感じる。「『線路に入らないで』とは言えても『人を助けないで』とは言えない。危険だから助けに入ることは絶対に禁止、と伝えていくしかない」

 ■目の前の対策を
 目撃者の証言によると、村田さんに救助された男性は自殺を図ろうとした可能性もあるとみられている。
 自殺対策に詳しい横浜市こころの健康相談センターの白川教人センター長は、「もし自殺者を救った事案であるならば、これを機に国としての自殺対策をもう一段踏み込んで発信することが、国民の助けになるのではないか」と話す。
 自分を救助した女性が亡くなり、それを国を挙げて美談とするなら、自殺願望があった可能性のある男性が精神的に追い詰められることは想像に難くない。村田さんの母親も取材に対し、「男性のフォローもお願いしたい」と語っている。
 男性が線路に横たわっていた経緯は明らかにはなっていないが、自殺未遂者は同じ行動を繰り返すことが指摘されている。白川センター長は「男性が抱えていた問題を探り、支援する必要がある」とも訴える。

 ■「美談」のあとで
 事故現場から車で数分の団地に、その表札は見当たらなかった。
 01年1月、JR山手線新大久保駅のホームから転落した男性を助けようと、居合わせた韓国人留学生とカメラマンが線路に飛び降りた。救助は間に合わず、3人とも死亡した。
 カメラマン関根史郎さん=当時(47)=は母千鶴子さんと、この団地で暮らしていた。事故後、勇気ある行動をたたえようと国や市の関係者が相次いで訪れ、賜杯や顕彰状を手渡していった。千鶴子さんは無言で説明を聞き、深々と頭を下げた。
 「息子を静かに弔ってあげたい。本当はそっとしておいてほしい」。同じ団地に住む女性(72)は千鶴子さんがそう漏らすのを聞いた。女性は続く言葉が忘れられない。「美談であろうが何であろうが、息子が死んでしまったことに変わりはない」
 事故から数年後、一人自室で息を引き取っていた千鶴子さんが近隣住民らによって発見された、という。

 ◆JR横浜線踏切内での人命救助と事故の経緯 1日午前11時半ごろ、横浜市緑区中山町のJR横浜線の踏切内で倒れていた無職男性(74)を会社員村田奈津恵さん(40)が助けようとし、電車にひかれ死亡。男性も鎖骨を折るなどしたが、命に別状はなかった。村田さんは父親(67)の乗用車に同乗し、電車が通過するのを待っていた。線路に横たわっていた男性を2本のレールの間に動かして救助したとみられ、男性の上を電車が通過して助かった可能性が高い。

 ■批判封じる 空気怖い、精神科医・香山さん
 事故の犠牲になった村田さんをたたえる安倍晋三首相の書状をどう見るのか。精神科医の香山リカさん(53)に聞いた。
 非常に違和感を覚えている。長嶋茂雄さんと松井秀喜さんの国民栄誉賞をはじめ、安倍首相はことさら光の当たる場面に登場しようとする。その延長で、今回はヒューマニズムの感動に自分の姿を刻もうとしている。
 パフォーマンスだとの批判も想定しているだろうが、その声を上げると「長嶋さんを認めないのか」「村田さんの死を非難するのか」という議論のすり替えで、逆に攻撃に遭う。微妙に、絶妙に批判しづらい対象を選んでいる。本来は短絡的な賛成反対では語れないことのはずなのに。
 深読みかもしれないが、自己犠牲を推奨し、誰かのために命を省みないことを全面肯定しているかのようだ。両親からすれば「生きてほしかった」と思っているだろうし、救助自体にも多様な意見があってしかるべきなのに、そういった議論を封じ込めてしまう。
 政府は本来、事故防止など現実的な方向を示すべきなのに、精神論に入っていこうとする。「こうあるべきだ」という規範を押し付けようとする空気が怖い。
 ご両親にしたって、悲しくてやりきれないだろうに、英雄視されることで、きちんと悲しめなくなるのではないか。それは戦争でわが子を失った親と同じ。死んでほしくなかったと言えない苦しみを与えてしまう。
 いまの社会は、いつ自分が少数派になるか分からないという不安感がある。そこに陥るとはい上がれないという恐怖から、多数派を見つけて、そこに属することで安心しようとする。そういう意味では「今はこれが正しい」というトレンドをつくり出すゲームの中で、社会を覆う不安感が政権運営に利用されてしまっているのかもしれない。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131005-00000018-kana-l14






私は後者の意見に同感です。
実際にああいう場面に遭遇したら、自分は踏切内に飛び込むことができるのか?
多分、現実にはできないでしょう。でも、非常ボタンを押しには行けると思う。
そして、どちらの考え方だとしても、亡くなった女性が安らかに眠ることができるように、その御遺族が心静かに女性を弔えるように、報道を含めて周りの人たちは静かに見守る姿勢が大切だと思うのです。  


2013年10月05日

フジテレビ開局55周年特別番組『池上彰緊急スペシャル!』

金曜プレステージ、フジテレビ開局55周年特別番組『池上彰緊急スペシャル!』を見ました。
http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2013/130929-384.html

今回のテーマは4つ。
1、消費税
2、神宮式年遷宮
3、宗教法人
4、靖國神社

サイトから番組内容を転載します。

☆LIVE解説!どうなる?消費税増税!

 10月1日に安倍総理が、消費税の8%への増税を決断する!?国民生活への影響は?消費税増税でどんなことが予想されるのか?良い点、悪い点を池上彰が分かりやすく徹底解説。
☆20年に一度行われる伊勢神宮の「式年遷宮」っていったい何?

 日々ニュースをにぎわしている伊勢神宮の「式年遷宮」。20年に一度行われる伊勢神宮最大のお祭りで、新しく作ったお宮に神様にうつっていただく、いわゆる“神様のお引っ越し”である。伊勢神宮にある宮社が、新しく造られるためその総費用はおよそ550億円だという。
 そもそも、日本に「神道」が広まったのは、仏教が広まった6世紀より前といわれている。山や木や岩などあらゆるものにも「神」が宿っているという、自然発生的に始まった日本古来の考え方が「神道」で、「やおよろずのかみ」つまり数えられないほどの神がいて、日本各地の神社と呼ばれるところにまつられている。その日本各地の神についてや、皇室との関わりなど池上が丁寧に解説。「神道」を理解することで、伊勢神宮の持つ意味、式年遷宮の持つ意味が理解できる。さらに、今回は池上彰と佐々木恭子フジテレビアナウンサーが、観光客で賑わっている伊勢神宮を直接取材。お宮から、木々、そして栽培されている食物に至るまで、伊勢神宮を丸ごと解説する。
☆宗教法人って何?

 靖国神社や、伊勢神宮などの日本の宗教法人は、なんと18万を超える数の団体が、日本に存在しているという。宗教法人は、“公益性の高い活動”をすることを求められている一方で、税金などのさまざまな優遇措置を受けていることはあまり知られていないが、この日本の宗教法人について、改めて池上彰が解説する。
☆なぜ、総理大臣の靖国参拝が海外から問題視されるのか?

 日本の総理が変わるたびにメディアをにぎわす「靖国参拝」。なぜ、日本の総理大臣の靖国参拝は海外から問題視されてしまうのか?一番問題視されている点は、太平洋戦争のA級戦犯を合祀していることだが、この合祀は戦後30年以上経った1978年に行われたことだという。靖国神社は1869年(明治2年)に、大村益次郎の発案で“国家のために戦った戦没者を神としてまつるため”に創建された。創建から今日までの144年の歴史を学び、靖国神社の持つ意味を知り、「国家神道」「靖国神社の神・御祭神」などを理解することで、この参拝問題の根底にある理由が見えてくるかも。

池上彰コメント

「例えば“式年遷宮”って普通のニュースでも取り上げますよね?でも伊勢神宮がそもそもどんな神社なのかや、古事記や日本書紀との関係など、ちゃんと取り上げることってないですよね。なんとなく、日本全体の神様らしいとか…、それを、そもそも神道とはどういうもので伊勢神宮とは何なのかをきちっと位置づける番組は、とても画期的ではないかと思います。また、靖国神社は、そもそもどんな神社であるとか、どうして国際問題になるのかなどをきちっと放送してはいないですよね。これを番組を見ることで分かっていただけると思います。さらに宗教法人ってよくニュースに出てきますが、そもそも宗教法人って何かを基礎から説明することで、日本の宗教が何か見えてくるのではと思っています。何となく、分かっているようで、分かっていない、また、何となくみんなが敬遠してきたことを、番組できちんと順序立てて説明したいと思います」

池上氏の番組は、ニュースや時事問題の解説がわかりやすいと評判のようですが、果たしてこれらの内容についてどれだけ正しく解説してくれるのか興味があると同時に、あまり期待せずに視聴しました。
消費税についてはさておき、のこりの3つについては仕事柄大変に興味深くもあり、気になる内容でしたが、結論から言うと不十分かつ不満足な内容でした。
特に靖國神社に関する解説については大事なポイントがいくつも抜けていたように思われます。
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