2012年06月09日

薨去 卒去

寬仁親王殿下の訃報に際し、新聞各紙では 「逝去」 と記していますが、正しい日本語は 「薨去(こうきょ)」 であるとは、先日の投稿にも記しましたし、多くの方が述べられているところです。

マスメディアが 薨去 の表現を用いないことについて、「皇室崇拝を連想させる言葉​は控える」 という説明をしたところがあるそうです。(私は未確認なのですが・・・)
日本の報道機関が、自国の貴人に対して尊称を用いないということには勿論憤慨するのですが、感情論を別にしてすこし論考(そんな大層なことではないのですが・・・)してみます。

そもそも、薨去という表現については律令に規定があります。
 令文については分かりやすいように現代語訳したモノを引用しています。 【参考】官制大観

養老喪葬令の薨卒死條には次のように記されています。
百官(散官・女官・無位皇親等全てを含む)が死亡したならば、親王、及び、三位以上は、薨と称すこと。五位以上、及び、皇親は、卒と称すこと。六位以下、庶人に至るまでは、死と称すこと。

三位、五位、六位は官位ですから良いとして、親王と皇親の区別はどうなっているのでしょうか。
養老継嗣令の皇兄弟條には次のように記されています。
天皇の兄弟、皇子は、みな親王とすること{女帝の子もまた同じ}。それ以外は、いずれも諸王とすること。親王より五世(=五世の王 ※ここでは親王を一世として数える)は、王の名を得ているとしても皇親の範囲には含まない。

つまり、天皇の兄弟と皇子(みこ)については男女を問わず親王であり、その親王より五世までは皇親であるということです。

この律令の規定に基づいて 薨去、卒去(そっきょ)、死去というのを使い分けるのです。


現代において官位はありませんが、皇族以外に薨去が用いられた実例もあるようです。
古い例になりますが、昭和20年にアドルフ・ヒトラーの訃報に際して朝日新聞は「ヒ総統薨去」という見出しを用いたそうです。(過去記事未確認)これは、国家元首であったため、天皇・皇帝に次ぐ立場との解釈によるものではないかと考えられています。
最近では平成23年10月22日にスルタン・サウジアラビア王国皇太子の訃報に際し、玄葉外務大臣が薨去を用いてメッセージを発信しています。→外務省サイト当該ページ

したがって、薨去を使用することが皇室崇拝に繋がるわけではないですね。

薨去という正しい日本語を用いないにも関わらず、御舟入(おふねいり:一般に言う納棺にあたる)や斂葬の儀(れんそうのぎ:一般に言う告別式にあたる)などの皇室儀礼に関わる用語はきちんと用いるのですね。
このあたりの区別が理解できません。

報道の責務として、正しい日本語を用いて表現することを求めたいところです。


逝去について記載を忘れていたので追記しておきます。(6月9日15:00)
上記の通り、律令では薨・卒・死の区別はありますが、それだけです。
国語辞典的説明では逝去は死者を敬って用いるとありますので、それぞれの字義を見てみましょう。

薨・・・みまかる、おわる
卒・・・おわる、すむ、やむ
逝・・・ゆく、さる

卒には他に「しもべ、やっこ」「あわてる」などの意味もあるようですが、薨、逝については他に意味はなさそうです。(出典:字源)
したがって、字義から区分を読み取ることはできません。単純に令の規定があるか否か、規定に従うか否かというだけのことのようです。

しかし、人の死に対して外国語ではこんなに使い分けたりするのでしょうか。英語ではDeadという単語しか思いつきません。勿論、違う言い回しはあるかと思いますが、違う言い回しならば日本語にもたくさんあります。



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