2017年06月13日

皇后陛下

昨日は 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」 から天皇陛下が譲位なされた後の、現在の皇后陛下の尊称について思うところを記しました。

で、ふと思ったのです。
皇后陛下に対する表現もおかしいなと。
いや、現在のマスメディアの皇室報道において、多くのメディアが正しく尊称を用いて表現できていないので、皇后陛下に対する表現だけがおかしい訳ではないのですが・・・。

マスメディアはしばしば 「美智子皇后」 などという表現をします。
この表現は日本語としては全く正しくないのですが 「皇室に親しみを持ってもらえる」「皇室と国民の距離が近くなる」 などの理由付けをして好んで使っているようです。

ところで先帝陛下、すなわち昭和天皇の御代ではどうだったのだろうかと。
昭和の時代、皇后陛下は「皇后陛下」「皇后さま」という表現だけだったように思います。
昭和天皇の后(きさいのみや)は、久邇宮邦彦王(くにのみやくによしおう)の第1女子の良子女王(ながこじょうおう)。
現代の 「美智子皇后」 という表記に倣うなら 「良子皇后」 ということになるのでしょうが、そんな表現を見たことがありません。

最も、現在の皇后陛下は、日清製粉の勤務されていた正田英三郎氏の長女、正田美智子様。
皇族や華族以外から初めて皇太子妃になられた方です。
そういう点から ”親しみを込めて” とか理由付けをして 「美智子皇后」 という表現が生まれたと聞いたことがあります。

そもそも、天皇陛下も皇后陛下も当代御一人な訳ですから 「◯◯天皇」 とか 「◯◯皇后」 と 「◯◯」 をつけて区分する必要がありません。
崩御された後、追号が奉られてはじめて 「◯◯天皇」 や 「◯◯皇后」 となられる訳です。

さて、先程、昭和天皇の時のことを記しましたが、良子女王が皇太子妃となられ、その後皇后陛下となられます。
昭和天皇が崩御されると、今上陛下が即位をされ、先帝の皇后は皇太后となられます。
そして皇太后陛下が崩御されると 「香淳皇后」 と追号されました。
ここで注目しておきたいのは 「良子皇后」 と追号された訳ではないということです。

現在の皇后陛下は、今上陛下の譲位によって 「上皇后(じょうこうごう)」 とお呼びすることに決まりました。
上皇后陛下もいずれは寿命が来て崩御せられることとなるわけですが、その後に 「美智子皇后」 と追号されるかどうかはわかりません。
ひょっとすると 「”美智子皇后” として親しまれてきたから」 などという理由で、そのように追号されないとも限りませんが、個人的には全く望ましくない追号だと思います。

適切な追号が奉られる、また 「美智子皇后」 と追号される、いずれの場合でも、これは崩御された後のことですから、「◯◯皇后」とお呼びするのは大変失礼なことなのではないでしょうか・・・。