2017年06月12日

上皇と上皇后

9日に天皇陛下の退位を可能とする 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」 が可決されました。

明治以降は天皇陛下の御代替わりは崩御による場合のみと規定されていましたから、大きな変革といえます。
最も、明治以前の天皇の御代替わりは譲位の方が多かったわけですが・・・。

さて、近代法が整備されて初めて 「譲位」 が可能となると問題点が発生することになります。
今回の特例法ではそういったことも含めて様々ことが規定されました。

その中の1つに、退位された天皇陛下の呼び方があります。
歴史的には退位された天皇は太上天皇(だじょうてんのう)とお呼びし、またその略称として上皇(じょうこう)が用いられてきました。
今回の特例法では、太上天皇の呼称を用いると「天皇」が複数存在することとなり混乱を招く可能性があることから「上皇」と定めたと聞きます(第3条)。

そして第4条では退位された天皇陛下の后(つまり前の皇后陛下)については上皇后(じょうこうごう)とお呼びすると定められました。
歴史的には先帝の后を皇太后(こうたいごう)とお呼びしており、また現行の皇室典範には、皇太后の文言があります。

ということは、現在の皇后陛下にあらせられては、今後今上陛下が譲位をなされると 「上皇后」 と呼ばれ、そして上皇陛下が崩御された場合もそのままなのでしょうか?それとも 「皇太后」 となられるのでしょうか?

本来 「皇太后」 の称号は天帝の后に対して用いられるものですが、崩御による御代替わりしか認められなかった時代には、「皇太后=先帝が崩御」という図式になっており、別の称号を準備したといいます。

「上皇后」という称号を新設したのは、物事をちょっと複雑にしてしまった感があります。


そしてもう1つ気になっていることは、皇室典範に対して特例法という附則的法律で皇室典範を規制している事に異を唱える人たちがいますが、現行の皇室典範は旧皇室典範と異なりただの法律です。旧皇室典範が皇室に関する家憲として憲法と同格の法規と位置付けられていたのとは全くの別物です。

旧皇室典範では第62條に
将来此ノ典範ノ条項ヲ改正シ又ハ増補スヘキノ必要アルニ当テハ皇族会議及枢密顧問ニ諮詢シテ之ヲ勅定スヘシ
と、改正・増補に関する規定がありますし、この規定によると国会の議決を経ることはありません。

しかし、現行皇室典範には改正規定はなく、また第37条に
皇室会議は、この法律及び他の法律に基く権限のみを行う。
また、附則にも
この法律は、日本国憲法施行の日から、これを施行する。
などとして、法律の1つであることが明記されています。

「皇室典範」などという名前にして、あたかも旧皇室典範の改訂版のように見せかけたのがよくないですね。