2016年11月04日

なぜ 「譲位」 ではなく 「生前退位」 なのか。

本論に入る前に、まずもって三笠宮殿下の薨去に際し、謹んで哀悼の意を表します。
本日は東京の豊島岡墓地で斂葬の儀が執り行わました。


さて、このブログで過去に2度記してきた「生前退位」という表記についてですが、先月下旬に産経新聞社は今後 「譲位」 と表するという記事を発表しました。
「生前退位」報道に思う (平成28年7月14日)
皇后陛下のお言葉をもってしてもまだマスメディアは「生前退位」と用いるのか? (平成28年10月20日)

当該記事はこちら。例によって削除対策にコピペです。
産経新聞は今後、「生前退位」ではなく「譲位」とします
2016.10.28 06:47

 産経新聞は、天皇陛下が天皇の位を譲る意向を示されている問題を報じる際、今後は「生前退位」という言葉を使わず、原則として「譲位」とします。
 「生前退位」は、陛下のご意向が伝えられて以降、本紙を含めマスコミ各社で使われてきました。耳慣れない言葉でもあり、違和感を覚えた方も多いのではないでしょうか。
 この言葉は、過去に国会での質問で使われている例があり(昭和59年、参議院内閣委員会)、いわゆる「造語」ではありません。
 「生前退位」が用語として広まったのは、次のような理由があると思います。
 まず「生前」が付くことで、すぐに陛下が天皇の地位を譲られるわけではないのが一目で分かること。さらに、現在は皇位継承が「天皇が崩じたとき」のみに限られていることを浮き彫りにした面もあります。
 しかし「生前」という言葉は、20日、皇后さまがお誕生日にあたり「大きな衝撃をうけた」と文書で述べられたように、「生前の姿」などと「死後」や「死」とセットで用いられることが多いのも確かです。
 現在、皇室は皇位継承者たる皇太子さまがおられ、陛下も「譲位」の言葉を使い、決意を関係者に伝えられたと報じられています。有識者会議での議論も本格的に始まり、「生前退位」という用語を使わなくても、十分にその意味するところが分かる環境になったといえます。
 「生前退位」は過渡的な役割を終え、「譲位」こそ、今後の説明に適した言葉だと考えます。(校閲部長 時田昌)

どうやら「生前退位」という用語は既に昭和59年には登場していたので「造語」ではない、そして「譲位」よりも「生前退位」の方が伝わるだろうと判断した、ということのようですが・・・。

しかし「生前退位」という用語が果たして一般的であったかというと全くそのようには感じられず、その結果が 「『生前退位』という造語」 と言われるようになったのではないでしょうか。

そして、私が冒頭に三笠宮殿下の斂葬の儀に関して表記したのは、勿論殿下の薨去を悼むからではありますが、ここにマスメディアの表記に対する疑問も呈するためでもありました。

「譲位」の単語は耳慣れないとして「生前退位」と置き換えながら(置き換えの是非についてはここでは不問)、「斂葬の儀」については ”一般の葬儀にあたる” という注釈をつける場合もありながらもそのまま表記しています。
また、一部のマスメディアでは「逝去」などとも記されたようですが、正しく「薨去」を用いていた新聞等も目にしました。

「斂葬」も「薨去」もそれほど一般的な用語ではないと思われますが、時には注釈を用いて表現されているのです。
なぜ「譲位」に関してはそれが当てはめられなかったのでしょうか?

私にとっては大きな謎です。