2016年07月14日

「生前退位」報道に思う

昨日のNHKニュースでは驚くべき報道がなされました。
天皇陛下が退位の意向を示されているというのです。
このニュースについては、新聞各紙やテレビ各局も報道していますから、ご存じない方はいないと思います。

さて、この報道について私は2つの疑問を持っています。
その件について記しておきたいと思います。


まず第1は、このニュースがNHKが独自に掴んだ、いわゆるスクープだったことです。
NHKと言うのはご存知の通り、国民から受信料を受けて放送している、公共放送です。
人によっては国営放送とも呼ぶくらい、公共性の極めて高い放送局です。
そして、民法各社と異なり、それほど視聴率を稼ぐことに躍起にならなくても良い放送局のはずです。
それが、なぜ宮内庁という公式機関からの発表も経ずに、スクープとして報道したのかという点です。

ことの真相は定かではありませんが、このスクープによって面子を潰された宮内庁は、躍起になって否定しているという話も流れています。
いずれにせよ、宮内庁としては全く予想外の報道だったということでしょう。

また、昨日は東京都知事選挙の公示前日であり、与野党それぞれが擁立する候補についてもいろいろと動静があり、情報が様々に飛び交っている中でした。
こういった状況の中、この様なスクープ報道をなぜ公共放送たるNHKが行ったのか、というのが私の感じる第1の疑問です。


第2は 「生前退位」 という言葉です。
ニュースでは、
天皇陛下が生前に皇位を退く生前退位の意向をお示しになられた

というような説明がなされていました。

そもそも、天皇が皇位を退くことについては 「譲位」 という言葉があり、この言葉は少なくとも私たちの年代は中学校の歴史の授業で習いました。
「譲位」という用語に重きは置かれませんでしたが、皇位を退いた天皇が 「上皇」 となり 仏門に入ると 「法皇」 となり、政(まつりごと)を行ったと習いました。いわゆる 「院制」 ですね。

義務教育課程でも習う 「譲位」 という言葉が、テレビで使用するのには難しい用語だから避けたということはないでしょう。
なぜ 「生前退位」 などという、これまでに聞き慣れない奇妙な日本語を持ちだしたのでしょうか?

某民放局では、今上陛下が皇位を退かれて、皇太子殿下が皇位に就かれた場合、今上陛下や皇后陛下をどのようにお呼びするのかという解説をしていました。
皇位を退かれた天皇は 太上天皇(だじょうてんのう)、太上天皇の皇后は 皇太后(こうたいごう) といいますと説明をしていました。
皇太后については、昭和天皇が崩御され今上陛下が即位された際にいらっしゃいましたから、記憶をされている方も多いかと思います。

また、現在の皇太子殿下が即位された場合、皇位継承第1位となるのは秋篠宮殿下であり、皇太弟(こうたいてい)となると言った説明もされていたようです。(集中して番組を見ていたのではないので、立太子などについてちゃんと説明があったのか不明ですが・・・)

いずれにしても、太上天皇や皇太孫などという用語がテレビで使えるのであれば 「譲位」 が使えない理由はないでしょう。
残念なことに、NHKが 「生前退位」 などと報道したため、他メディアも倣って軒並み 「生前退位」 という表現を用いています。

少し前までNHKアナウンサーは日本語には結構厳しかった印象がありますし、事実そうであったとも聞いています。
なぜ、こんな奇妙な表現を行って報道しているのか大いに疑問です。


以上、
 1,なぜNHKがこのタイミングで皇室についてスクープ報道を行ったのか
 2,なぜ 「譲位」 という日本語があるにも関わらず 「生前退位」 などという奇妙な日本語を造り出して報道しているのか
この2つが、この報道を見て感じた私の感想です。