2015年06月07日

自由民主党にモノ申す

安倍政権が進める安保法案。大きな争点の1つに「集団的自衛権行使」と憲法の兼ね合いがあります。
この件について、与野党で憲法学の専門家を招き参考人質疑を行ったところ、与党が推薦する参考人も含めた3名全員が「憲法違反」との結論を出しました。

与党参考人が安保法案「違憲」 “人選ミス”で異例の事態 野党「痛快」 憲法審査会
産経新聞 6月4日(木)18時58分配信


 衆院憲法審査会は4日、憲法学の専門家3人を招いて参考人質疑を行った。憲法解釈変更による集団的自衛権の行使を含む新たな安全保障関連法案について、与党が推薦した参考人をはじめ全員が「憲法違反だ」と批判した。与党が呼んだ参考人が政府の法案を否定するという異例の事態となり、“人選ミス”で墓穴を掘った。
 自民党や公明党などが推薦した早稲田大の長谷部恭男教授は審査会で、安保法案について「憲法違反だ。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない」と明言した。
 これに対し、法案作りに関わった公明党の北側一雄副代表は「憲法9条の下でどこまで自衛措置が許されるのか突き詰めて議論した」と理解を求めた。だが、長谷部氏は「どこまで武力行使が新たに許容されるのかはっきりしていない」と批判を続けた。
 関係者によると、自民党は参考人の人選を衆院法制局に一任したという。ただ、長谷部氏は安保法案に反対する有識者の団体で活動しているだけに調整ミスは明らか。「長谷部氏でゴーサインを出した党の責任だ。明らかな人選ミスだ」(自民党幹部)との批判が高まっている。
 審査会幹事の船田元(はじめ)自民党憲法改正推進本部長は、長谷部氏らの発言について、記者団に「ちょっと予想を超えた」と釈明。船田氏はその後、佐藤勉国対委員長から「自分たちが呼んだ参考人の発言だから影響は大きい。安保法制の議論に十分配慮してほしい」と注意を受けた。
 一方、野党は衆院平和安全法制特別委員会で「政府・与党の矛盾」を追及する構えだ。審査会で長谷部氏の発言を引き出した民主党の中川正春元文部科学相は党代議士会で「憲法審査会で久しぶりに痛快な思いをした」と満足げに語った。



この結論に対して与党議員からは批判の声が上がっている報道がありました。
菅官房長官もこの結論が適正ではないというコメントを出しています。

違憲指摘「全く当たらない」 菅氏、衆院憲法審査会参考人質疑に反論
産経新聞 6月4日(木)18時55分配信


 菅義偉官房長官は4日の会見で、同日開かれた衆院憲法審査会の参考人質疑で、3人の参考人全員が審議中の安全保障関連法案について「憲法違反」としたことに関し、「法的安定性や論理的整合性は確保されている。全く違憲との指摘はあたらない」と述べた。
 菅氏は、昨年7月に閣議決定した安保関連法案の基本方針に触れ「憲法前文、憲法第13条の趣旨をふまえれば、自国の平和を維持し、その存立を全うするために必要な自衛措置を禁じられていない」と指摘。「そのための必要最小限の武力の行使は許容されるという、以前の政府見解の基本的な論理の枠内で合理的に導き出すことができる」と話した。
 自民党などが参考人として推薦した早稲田大の長谷部恭男教授が憲法違反だと指摘した点に関しては「全く違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる」と述べ、今後の法案審議への影響は限定的との見方を示した。


確かに集団的自衛権の行使は憲法違反にあたらないとする憲法学者もいます。
しかし経緯はどうであれ与党が参考人として推薦した有識者から「違憲」の結論が出たことは重く受け止めなくてはならないと思うのです。

そして今回の結論に対して与党が取るべき方策は、参考人批判や合憲の結論を出してくれる別の参考人招致ではないと考えます。
憲法違反との見解が出されたがそれはそれとして、果たして集団的自衛権の行使が必要かどうかをしっかりと(世間に)問う必要があると考えます。
勿論、集団的自衛権の行使は国防上必要だと世間に認識してもらえるようにしなくてはなりませんが、その上で 「必要とされる事柄が憲法違反となるのは憲法条文が誤っているからだ。だから改憲をしなくてはならない。」 とするのが筋ではないでしょうか。

自ら推薦した参考人が意図する結論を導き出さなかったから無効にする批判するという態度は政府の信頼を失わせる行為です。
政治不信に陥っている現在、これ以上不信を募らせずに如何に行政府の役割を果たすかが政府に求められる行為だと考えます。
出されてしまった結論は結論として、それを踏まえて我が国のより良い在り方をどうするかを考えてゆくのが真の政治家の役割だと私は考えます。

世間には憲法改正に反対している政党もあるようですが、果たして彼らは本当に改正反対なのでしょうか。
これについては、項を改めたいと思います。


6/12 参考人の人選についての記事をUPしました。「自由民主党にモノ申す(その2)」をご覧ください。