2013年05月13日

人の名前と漢字

先日、神社でちょっとした催しを行いましたが、新聞社・ラジオ局が取材に来ていました。
その時のやり取りが少々気になったので記しておきます。

某新聞社の記者が、催しに参加してくれた子供に氏名を尋ねた時のやり取りです。(会話の一部は省略しています)

記者A 「お名前は?」
子供B 「ヒロ○○です。」
記者A 「どういう字を書くのかな?」
子供B 「広いという字の中が黄色のヒロと・・・・(以下略)」
記者A 「廣じゃなくて広でもいいかな?」

おそらく、紙上で使う文字をなるべく簡易なものにしようという編集方針から 「廣」 ではなくて 「広」 で良いかという確認なのでしょうが、これはいけません。人名とか固有名詞は軽々に変えてしまってはいけません。
確かに 「廣」 は 「広」 の正字であり、つまり 「広」 は 「廣」 の略字ですから、同じ文字ではありますが・・・。
でも、同じ字だから良いでしょうという風潮が進むと同じ読みだから良いでしょうという方向に進まないとも限りません。
極端な事を言うと、織田信長での小田信長でもどちらでも良いことにされてしまうということです。

そんなことを漠然と思っていたら、同じ日にこんなやりとりも聞こえました。

記者C 「お名前は?」
子供D 「○○サキです。」
記者C 「○に崎でいいのかな?」
子供D 「違うよ。山じゃなくて立だよ。」
父兄E 「どっちでもいいよ。同じ字だから。」
子供D 「お母さんが違うからちゃんと書かなきゃいけないって言っていたよ。」
記者C 「右の上が”大”じゃなくて”立”のサキだね。○○ザキ君でいいのかな?」
子供D 「ザキじゃなくてサキです。」
記者C 「○﨑と書いて○○サキ君だね。」

ちゃんと違うと言えたこの子供は偉いと思いますし、そう教育しているお母さんは立派だと感じました。

﨑は環境依存文字なので機種によっては表示されないかもしれません。
文字のヘン(左側)が”山”、ツクリ(右側)が”立”と”可”です。

些細なことかもしれませんが、実は大切な事なんです。

ちなみに、伊太曽神社はよく伊太曽神社と表記され、間違っていると指摘するとしばしば 「あっ、イノルの古い字なんですね。」と言われますが、 は全く別の文字です。
そして、 のヘン(左側)は ですか ですかとも聞かれますが、これは字体の問題でどちらでも構いません。
文字に携わる生業の方々には、こういったことはちゃんと知っておいてほしいものです。