2011年08月16日

千鳥ヶ淵戦没者墓苑は無名戦士の墓か?

昨日、このブログで「靖國神社と千鳥ヶ淵戦没者墓苑」を記したところ、大変多くの方にアクセスいただきました。ありがとうございます。
靖國神社と千鳥ヶ淵戦没者墓苑の違いをご理解いただけたものと思います。

このあとふと気がついたことが1つあります。千鳥ヶ淵戦没者墓苑をアメリカのアーリントン墓地のような無名戦士の墓のように捉えられている方が結構いるのではないか、と。

無名戦士の墓というのは、文字通り「氏名不詳の戦士」をその国家における全戦争の代表として、またはそれぞれ特定の戦争における代表として葬ったお墓です。
アーリントン墓地を例に挙げると、各戦役の身元不明の戦没戦士の遺体1体をその戦役による戦没者全体の代表としてそれぞれ埋葬しています。もし、無名戦士として埋葬された遺体の身元が分かると、別の身元不明の遺体と入れ替えるとも聞いています。

一方、千鳥ヶ淵戦没者墓苑では前回記した通り、身元不明の遺骨と同時に遺族不明の遺骨も納められています。そして、戦没者全体を代表するような納骨形式は取られていません。
したがって、無名戦士の墓たる形態をとっていないのです。

ちなみに、身元不明の遺骨が納められているから靖國神社を補完する施設だという見解も誤りです。
靖國神社には遺骨は納められておらず、全て御霊(みたま:霊魂)をお祀りしています。
御霊は戦没者の氏名が判明すれば祝詞を奏上してお祀りするので(実際にはいろいろと手続きやら手順がありそんなに容易ではありませんがここでは割愛)御霊は靖國神社に祀られているが、遺族の手元に遺骨は届かず実は千鳥ヶ淵戦没者墓苑に納骨されているということも充分ありえることなのです。

そして大事なことがもう1つ。千鳥ヶ淵戦没者墓苑に納められている遺骨は大東亜戦争の戦死者であるという点です。日本の近代化においては日清戦争や日露戦争という戦争もありましたし、戊辰戦争などの内戦もありました。これらの戦争・戦役による尊い犠牲の上に現代日本が成り立っている歴史を鑑みても、千鳥ヶ淵戦没者墓苑では無名戦士の墓として存在するには不十分だとご理解いただけるかと思います。

各国の元首が外国を公式訪問する際にはその国の無名戦士の墓を訪問し献花するのが通例となっているといいますが、日本において諸外国の「無名戦士の墓」に相当するのは靖國神社を置いて実は他にありえないのです。

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